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それでも青春は続く

シュガーラッシュオンライン、素直に観るか?穿ってみるか?

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 シュガーラッシュの続編にこんなにも気持ちを乱されるものかと自分でも非常に驚いている。これは悪意だろうか。あのド名作のシュガーラッシュの続編なのだから、当然楽しくてスパイシィで勇気と友情の物語を期待するだろう。私もそう思っていた。あのときは幸せだったと思う。もう観てしまった人はご愁傷様。まだ観てない人はおめでとう。これから経験できるなんて羨ましいなぁ。

 ネタバレを含みつつ、感想とか考えたことをざっくり書いてみようと思う。ネタバレもありますので、未見の方はご注意を。

 

 

ネットの海は広大よ

 シュガーラッシュオンラインを観て、まず君が目撃するのはインターネットワールドの素晴らしさだ。映画館のスクリーンいっぱいに映し出されるインターネット世界。綺羅びやかで、雑然としていて、整然としていて、それはそれは広大な世界だ。Googleがあり、Amazonがあり、人々はパケットとして活動し、自由に検索や買い物、ゲームを楽しんでいる。インターネットをディズニーが描くとこんなにも楽しい世界になるのかと、思わず息を呑む。ズートピアで描かれた戯画化した美しい動物世界を思い出してもらえれば、イメージしやすいかもしれない。映画「攻殻機動隊」の草薙素子が「ネットの海は広大よ」と言い残してネットへ旅立っていく気持ちもわかる(熱い風評被害)。

 美しいインターネット世界の描写は素晴らしいのだが、主人公たちの関係の雲行きは怪しい。インターネットに新天地を見出したヴァネロペと、一刻も早くもとの世界に帰り今までと同じ暮らしを続けたいラルフ。二人の方向性の違いはとんでもないことを引き起こしていく・・・。というのはざっくりとしたあらすじなのだが 、ストーリー的には大して毒はない。話だけを追っていけば、トラブルが起きて、なんやかんやあって丸く収まるという、王道的な話だ。物語なんだからそうでないと困る。が、私が言いたいのはそこではない。

 

非モテ男としてのラルフ

 シュガーラッシュ1で悪役からヒーローになれた主人公「ラルフ」。彼はいつでもヴァネロペの幸せを願い、それを叶えようと努力する、素晴らしい男だ。そう、まるで非モテの童貞男のように、だ。

 ヴァネロペとずっと一緒にいたいという気持ちが先行するあまり、彼女の気持ちも考えず暴走してしまう。その結果、ラルフの影ともいうべきウィルスを発生させてしまうのだが、このラルフウィルスがかなりキモい。「トモダチ・・・トモダチ・・・」と独り言を発しながらヴァネロペだけを追いかけていくのだ。この姿は、女に振られたのに気づかないで、しつこく女に追いすがり、LINE爆撃をしてしまい、さらに評判を落とす悲しい非モテ男に通じるものがある。しかも、力づくでヴァネロペを追い詰め、支配しようとする魂胆(自我はないから無意識なんだけど)は、まるでDV男のそれを観るかのようだった。かなりキモい。こわい。こんな話でいいのか?と、思わずにはいられなかった。映画館にはカップルや家族連れもいただろう。奥さん(彼女さん)が隣のあなたをみる。そして思うかもしれない「もしかして、この男もラルフ?」と。

 

あの人の目が頷いていたよ。別れも愛の一つだと。

 シュガーラッシュ1がヴァネロペとラルフが出会い、それぞれが活躍し復活する、「出会いと革命の物語」だとするのなら、シュガーラッシュ・オンラインはヴァネロペとラルフが別れ、それぞれの人生を歩み出す「別れと前進」の物語だ。前者では出会うことで人生を始めることができ、後者は別れることで人生を再開させている。どちらがスカッとした気分になれるかといえば、間違いなく前作だ。でも、別れによって心に傷を負い、それでも友人でいることができるならば、それは美しいことだと思う。さよならだけが人生だ、と誰かが言い、別れも愛の一つだと、誰かは歌った。俺は泣いた。

 

シュガーラッシュオンライン〜悪趣味を添えて〜

 もうご覧になった方はわかっていると思うが、この映画、かなりてんこ盛りだ。セルフパロディ、セルフ二次創作、ゲスト出演、なんでもありのトンデモ映画だ。唐揚げ丼にマヨネーズとラー油をかけまくったような、もうお腹いっぱいですという映像の応酬だ。プリンセスの扱いってこれでいいの?といらぬ心配をしてしまうくらいだ。まあ、それは全然悪趣味ではなくて、過激だなあ、と思うくらいでいいんだけど(でも過激という表現がふさわしいと思う)。

 それより、あれだ、エンディングクレジット後のオマケ映像(オマケなのかな?)が問題だ。大盛り唐揚げマヨネーズ丼を食べて、結構満足している状態で帰らせてくれればいいものを、どうしてこんな仕打ちをするのだろうというものを見せてくるのだ。ハッキリと描かれるわけではないが、実質ブラクラだ。精神的ブラクラ。なんて悪趣味なオマケを、それも2回も見せるのかワケがわからないよ。

 映画が始まる前に「NO MORE映画泥棒」を見せられてげんなりする方も多いと思うが、あれをクレジット後にやられたような、そんな衝撃。私が何をしたというのか。

 ディズニー流のネット社会への警告なのかもしれないが、悪意がすごい。寓意も一周回って悪趣味だ。

 映画館では、エンディングクレジットが流れ始めるとすぐに席を立ち、他人の前を通って出ていこうとする不届き者がたまにて、非常にイライラさせられることがあるが、この映画に限って言えば、そうすることが正解かもしれない。誰も不必要に傷つくことはない。僕は3日ほど立ち直れませんでしたので。なんか煽られるし・・・。

 

シュガーラッシュオンライン、素直に観るか?穿って観るか?

 シュガーラッシュオンラインは素直に観れば面白いと思います。でも、ある意味過激で、かなり悪趣味な作品だとも思います。穿ってみることもできるでしょう。ただ、「シュガーラッシュの続編だ〜〜!!やった〜〜〜!!」と何も心にバリケードを立てないで観ると火傷もするでしょう。それも一つの体験かもしれません。ぜひ体験してみてください。では皆様もよいクリスマスを。パッピークリスマス!