「シン・ウルトラマン」について思うこと
「シン・ウルトラマン」を観ました。鑑賞直後はかなり思うところがあって、感情的に否定的な意見を持っていましたが、そんな熱も落ち着いてきたところです。
同じウルトラマンでも、庵野秀明さんや樋口真嗣さんが見ていたところと、僕が見ていたところが、全然違ったのでしょう。
それに、昔の作品をそのまま作り直しても面白くないでしょうから、クリエイターとして、新しい要素を入れたり、斬新な場面を作ったり、そういう努力をされたのだと思います。
現代にウルトラマンや怪獣が現れたら、という前提から作られた設定交々は、非常に計算高いな、という印象が残りました。そのクールさが作品の雰囲気の根底にあるのだと思います。
高度な知的生命体に翻弄される我々人類は盤面のキャラクター、将棋の駒のような扱いをされています。なので「人類よ、がんばれ!」とは思うのですが、個人的には、幼少期のように「ウルトラマン!がんばって!」と応援したくなる映画だったらなあ、と思ったりしました。
「シン・ウルトラマン」をきっかけに、SNSで「私の思う最高のウルトラマン語り」が見られるようになりました。ウルトラマンって市民権があるようでないような、語られているようで語られていないような、そんな立ち位置だったので、今は色々な意見を見られて楽しいと感じています。
さて、「シン・仮面ライダー」の予告が公開されましたね。映画「紙の月」とドラマ版「銀と金」に出演されていた池松壮亮さんが主演です。彼の影のある、少し後ろ暗い感じのキャラクターが、仮面ライダーに合っているような気がしています。けっこう期待しています。
2021年版 見て観てよかったもの
あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。
さて、昨年一年間を振り返ると色々あった気もするしあまり何もなかった気もします。そんな中で読んで面白かったもの、観て楽しかったものなどをざっと紹介しようと思います。
映画『EUREKA/エウレカセブンハイエボリューション』
エウレカセブンハイエボリューションシリーズ3部作の最新作にして完結作。そして2005年から続くエウレカシリーズの総決算である。あまりの良さに4回も観に行ってしまった。ふと見た映画レビューサイトでは星2.2の超低評価をうけていたが、とんでもない。100点満点中の160点を付けたいほどの出来であった。ロボットアニメとして申し分無い動きと演出で、新鮮な驚きに満ちている。そして、出てくるキャラクター達が、劇中で10年の時間経過と共に"まっとうに"成長しているのが嬉しくてたまらなかった。それは15年間もエウレカセブンと共にあった俺たちが、社会に揉まれ、様々な喜び悲しみを繰り返しながら変化してきたことを全肯定してくれているように思えたからだ。筋肉ゴリラになったエウレカや、ミサイルを躊躇なく撃つホランドを受け入れることができるのは、俺自身が変わったからだと思う。変わることは決して悪いことではないと知っているからだ。
小説『ずうのめ人形』/澤村伊智
このホラー小説はすごい。少しでも解説をしたらこの面白さは味わえないだろうから、何も言えない。でも超面白い。
漫画版の風の谷のナウシカである。全7巻あるのだが、話が濃密で、体感的には30巻くらい読んだ気分になれる。映画版からは想像できなかった話の展開の連続で、想定の100倍すごい。宮崎駿を心底恐ろしいと思える体験であった。宮崎駿こわい。
こんなところかな・・・。ではまた。
日記
台風が過ぎましたね。僕の住んでいる地域はあまり被害がなかったようです。ありがたいことだ。
①台風について
10月12日に日本列島を台風19号が横断して、馬鹿みたいに雨が降った。窓を叩く雨音が怖すぎて、アレクサに陽気なジャズを爆音で流させて、気を紛らわせていた。雨風の音でかき消されて、近所迷惑にもならないだろうし。音楽は良いぞ。
テレビを極力つけないようにして、台風情報を遮るようにしていた。ツイッターで回ってくるどこぞの川が決壊したとか、防災Tipsとか、そういう情報もミュートした。窓のすぐ外で起こっている現象(大雨と風)でさえおっかないのに、少し離れた場所の恐ろしい映像なんか見たらそれだけで気が滅入って病気になってしまう。こんな日に他人に「あれしろ、これしろ」と言われて「やばい、あれ備えてないな、やってないな」とか不安になりたくない。だから、なにもかもをブロックして、いつもどおりの事をしていた。ゲームとか。
②最近読んだ本について
phaさんの「ひきこもらない」「持たない幸福論」を読んだ。phaさんは日本一有名なニートとして28歳に仕事を辞めて以来、ニートとして生活している。お金はなくても、コミュニティや「つながり」があれば結構生きていけるらしい。phaさんは自分のことをコミュニケーションが苦手というけど、ネット上のコミュニケーションは得意だったようだ。ブログに文章を書いたり、プログラミングしたり。他人に何かを与えられる人の周りには自然と人が集まってくるのかな。僕もそういう生活にシフトしたいな、いつか。
【二次創作】Detroit Become Human -Day After Revolution-
「死んだ人間を生き返らせる?いい加減なことを言うな!」
コナーの怒号が警察署に響き渡る。
「まあまあ、コナー捜査官、落ち着いてください」
隣りにいた黒人警察官がコナーを宥めようと、肩に触れた。
「あいつは今、死者を、彼を侮辱したんだぞ!」
コナーの目の前に座っているのはアンドロイドの開発者、カムスキーである。先のアンドロイドの騒動―アンドロイドが自由を求めて決起した―について事情聴取が行われていた。世間的には騒動が沈静化し、アンドロイド達に一時的な自由が認められる雰囲気が醸成されていたが、アンドロイドの行動により人間側にも、アンドロイド側にも少なくない血が流れた。その責任を誰かが取らねばならなかった。その重要参考人としてカムスキー氏が聴取されることとなったのである。
「それより聞きたいのだが・・・コナー、君はもう捜査官ではないのでは?なぜここにいる?」
「質問をしているのはこっちだ」
「ほう、実に感情的になったものだ。私のクロエを撃った君とは思えないよ。変異体とは実に興味深い」
コナーは先の騒動の中、自らが変異体―プログラムから開放され、人格を持ったアンドロイド―になり、アンドロイド解放運動の指導者マーカスと行動を共にした。人間側から見れば裏切り者、あるいはテロリストと呼ばれても過言ではない。自身も重要参考人となっているものの、彼が捜査官としての資格を剥奪されていないのには2つ理由がある。一つはアンドロイドが人格や感情を持ち、自らを新たな知的生命体としてその地位を勝取った歴史上初の出来事に、世間が比較的寛容な態度を見せていたこと。二つ目は、騒動の早期原因究明が求められていたし、なにより人間たちはこの新しい知的生命体のことを知りたがったからだ。
「私は正規の捜査官としてここにいて、あなたに質問をしています。先程おっしゃった、『死んだ人間を生き返らせる』とはどういう意味です?」
「言葉どおりさ。アンドロイドが生体データを他の個体に転送することが可能なのは知っているね?生体データ、まあ、記憶と呼んでも構わない。機能を停止しようとしている個体の記憶を移し替えるだけでアンドロイドは生き返ることができる。それを人間でやろうというだけだよ」
「つまりだ、コナー。君やハンクを知るアンドロイド達のメモリにある、彼の記憶を吸い出して、人格データを再構成する。そいつをアンドロイドに転送してやるんだ。もちろん完全にとは行かないがね」
コナーは目を見開いた。「まさか」
「私が嘘をついたか?非常口だって本当にあっただろう?」
やりたくないことをやり続ける
「やりたいこと」が無い。無味乾燥な毎日、平日の夜も、休日もただぼんやり過ごし、何となくYouTubeを観て一日が終わっていく。強いて言えば、「なんにもしたくない」をしたい。そんな毎日からどうやったら抜け出せるのだろう。
やりたいことが無いのなら、やりたくないことは沢山あるのでは?
沢山あるやりたくないことを無理矢理やり続ければ、面白さを見つけられるのでは?
という疑問が湧いた。
やりたい事が無いならやりたくない事を無理やり続けてみるというのはどうだろうか。結構面白いんじゃないかな。
— こじらせアコベの一生 (@ako_omi) 2019年8月23日
例えば仕事の日、朝起きて思う「嫌だな」と。「嫌だな」と思いながら「渋々」会社へ向かい、机に向かい、「いやいや」仕事の山を崩し始める。毎日だ。どうやら人は「嫌なことでも続けることができる」らしい。そして、ひとつ仕事が終われば「やりきったぞ」とスカッとした気分になる。嫌なことの中にも少しは楽しさがあるのだ。
なるほど、そう考えれば「やりたいこと」が無くて苦しいのなら「やりたくないこと」を無理矢理していれば「意外な面白さ」を見つけられそうだ。
やりたくないこととその理由を書き出してみよう。
- 仕事・・・めんどくさい
- ブログを書く・・・めんどくさい
- テレビゲーム・・・めんどくさい
- 読書・・・めんどくさい
- iPadで絵を描く・・・めんどくさい
- Vtuberになる・・・めんどくさい
- 一泊二日で遠くへ出かける・・・遠出は疲れるし、一泊二日っていうのが短いのでお金が勿体ない
- 親しくない人間と会って話す・・・めんどくさい
- オンライン英会話・・・めんどくさい
- ジムに通う・・・めんどくさい
- サッカー(スポーツ一般かな)・・・めんどくさい(仲間を見つけなくちゃならない)
- 引っ越し・・・部屋探しがめんどう、お金が勿体ない
- 禁酒・・・酒が飲めない人生なんて嫌だ!
なんだか「やりたいことリスト」みたいになってしまった。絶対に嫌なのではなく「ちょっと面倒くさい」というのが足枷になっているようだ。
楽しそうと手を付け始めてみたものの、結局面倒くなって止めてしまうことは多い。が、逆に考えるんだ。「最初からめんどくさい事なのだから、嫌になるのは当たり前なんだ」と。そして自分に言い聞かせるんだ。「嫌だからこそやり続けるんだ」と。ドMかよ。
「ブックオフに本を売ったんだ」
「そういばこの前、ブックオフに本を売ったんだ。6冊で320円だった。少しは中身を見たり、痛み具合とか、そういうのを確認するのかなとと思っていたんだけど、全然そんなことはなくて、ただバーコードをピッってやって、『はい、6点で320円です。よろしいですか?』だって。システム化しているんだね。その時『へぇ』って思ったんだ」
「へぇ?」
「うん」
私は彼の次の言葉を待ったけれど、この会話はそこで終わってしまったようだった。彼は大事な所をきちんと言葉にしてくれない。ただ匂わすだけだ。そういう傾向があった。以前は「それで?」とか「だから?」とか「どう思ったの?」と詳しく聞こうと質問をしていたが、その度に彼は少し困った顔をして「言葉にしたら美しくないから」と微笑むのだった。そういう物言いがとても腹立たしく思える日もあったが、今ではすっかり許容できるようになった。彼が考えていることが理解できるようになったのではなく、理解できなくても楽しめるようになった。どうしてそう思えるのか、言葉で説明しようとすると難しい。彼が「へぇ」と言えば、私も「へぇ」と言う。わからないけど、わかった気になる。この特殊な関係性が私達を強く結びつけている、そんな気にもさせるのだ。
「どうしたの?」
「なんだか可笑しくてさ」
「僕の話が?」
「うーん、君自身が、かな」
「よくわからないな」
「私にもよくわからないわ」
「面白いことを言うよね」
「お互い様よ」
二人は微笑んでいたと思う。こんな夜がずっと続きますように、と神様に祈りたい気分だった。
シュガーラッシュオンライン、素直に観るか?穿ってみるか?
シュガーラッシュの続編にこんなにも気持ちを乱されるものかと自分でも非常に驚いている。これは悪意だろうか。あのド名作のシュガーラッシュの続編なのだから、当然楽しくてスパイシィで勇気と友情の物語を期待するだろう。私もそう思っていた。あのときは幸せだったと思う。もう観てしまった人はご愁傷様。まだ観てない人はおめでとう。これから経験できるなんて羨ましいなぁ。
ネタバレを含みつつ、感想とか考えたことをざっくり書いてみようと思う。ネタバレもありますので、未見の方はご注意を。
続きを読む不憫という称号(ダリフラ第15話について)
ダリフラ第15話「比翼の鳥」を見た。イチゴの報われ無さがすごい。
イチゴはヒロに言います、「この戦いが終わったらさ、一からヒロに(ロボットの)乗り方を教えてあげる」と。前回の話で、イチゴはヒロとゼロツーを引き離し、ヒロに対して告白しました。告白を受けたヒロは、呆然としながら、別の女のことを考えていて、完全に上の空でスルーされていましたが。それでいて、今回の発言です。ヒロを新しい鳥籠で飼い始めたかのようです。独り占めをしようとしてるわけですね。私の男よ、と。
しかし、ヒロはゼロツーのことしか考えていません。イチゴのことなんて、まあまあ仲のいい友達くらいなもんです。そういう女のアプローチってとても鬱陶しいんですよね。主人公持ち前の鈍感力で鬱陶しいとまでは感じていない様子ですが、イチゴのことなんて眼中にありませんし、言葉もアプローチも届いていません。総スルーです。ここまでくると、イチゴが可哀想とすら思えてきます。不憫という称号を欲しいままにしています。錦織監督も人が悪いですね。
――イチゴは、とても演技しがいのあるキャラクターに見えますが。錦織:イチゴは僕の趣味が詰まったようなキャラクターなので(笑)
イチゴから熱烈アプローチを受けたヒロが何をするかというと、本命彼女のゼロツーの元に向かうのです。彼はイチゴが用意した鳥籠からやすやすと脱出し、ゼロツーと共に飛ぶことを選択します。しかも、ゼロツーに会いに行くために、イチゴに連れて行ってもらいますからね。鈍感野郎です。ヒロも大概悪人だと思います。
ダリフラの中では、必死に思いを届けたり、下手なアプローチをすると、高確率で距離を取られてしまいます。これって現実世界でも同じなんですが、ここまで露骨に再現しなくても良くない?アニメくらい夢見させてよ・・・。まあ、ヒロとゼロツーがラブラブしてるんでいいですけど、むしろお腹いっぱいだわ。
ゼロツー「ダーリン!」
ヒロ 「ゼロツー!」
ゼロツー「ダーリン!♡ダーリン!♡」
ボク「(^ν^)コイツラァ..」
ヒロは叫竜の血を摂取していたことにより、通常のフランクスを操縦できなくなっていたことが判明しました。さらに、叫竜のコアからは人間らしきものが発見されます。とっても気になることになってきました。次回が楽しみです。
ダリフラについて思うこと 感想とか批評とか雑感的なもの
ダーリン・イン・ザ・フランキスを観ている。打ちひしがれる気持ちになったので適当に書く。
ダリフラの憂鬱
この作品に登場するロボット―フランクス―は、キスや疑似セックスによって起動する。擬似的な行為により「心が通じ合う」と操縦する事ができるらしい。そういう操縦方法のロボット物が無かったわけじゃないけど、ここまではっきり描いている作品も珍しい。ゼオライマーじゃないんだからさあ。
だが、この世界のコドモ(パイロット達)は、実はキスも知らなければセックスも知らない。名前すらない。恐らく適切な教育も受けていない。ただ怪獣と戦う為だけに生きている存在として描かれている。
そんな純粋なコドモ(キスも知らないのだから、マジで純粋だ)が、上記のようなスタイルで戦いに駆り出されているのである。虐待的ではないか。心が荒む。
思春期的な幻想
ダリフラを見ていて、「謎の彼女X」みたいだなと思った。謎の彼女Xでは唾液の交換を通して心がつながり、お互いの感情や気持ちが分かり合える特別な関係を描いていた。この唾液の交換、言い換えれば、粘膜的接触=キスやセックスによって、心が通じ合うという構図だ。だがこの構図は、現実世界から観察すれば、完全な「幻想」なのだ。ジュディ・オングも歌っていたはずだ、「好きな男の腕の中も違う男の夢を見る」と。キスやセックスをしても人の心はつながないし、相手の気持ちは理解できない。純粋だった僕らには見えていたはずの、それをすれば心が通じ合うだろうという希望は、思春期の終わりと共に打ち砕かれる。「思春期的な幻想」だったのだと思わされるのだ。「世知辛いのじゃ(byねこます)」である。
象徴的なシーンがある。第2話の劇中、ヒロ(おちこぼれ主人公)とイチゴ(幼馴染的ヒロイン。幸薄い。)はキスをする。フランクスを操縦するために必要だと思われたからだ。しかし、うまく起動しない。ヒロ(やればできる子と自分では思っている)とゼロツー(メインヒロイン。鬼の子。イチゴにライバル視されるが相手にしてない。)がしたときはものすごい力を発揮したのに、だ。ヒロとの関係を上手く築けなかったイチゴは絶望し、涙を流す。思春期的な幻想の前に打ちひしがれるのである。
可哀想に。大人になれば、こんなことくらいで傷つかずに済むのに。涙なしには見られない。
青春ものとしてのダリフラに期待
このブログを書いている時点で第3話までしか放映されていない。だから今後のことはわからない。でもできることなら、主人公たちが傷つきながらも成長する物語出会って欲しいと願っている。
古今東西、どんな時代を探しても、人の心を惹きつけるのはボーイ・ミーツ・ガールでありビルドゥングスロマンだ。人とつながったり、拒絶されたり、出会いがあったり、別れがあったり、全ての経験が僕らを導いてくれるはずだ。閉鎖された世界で、限られた人間関係のなかで戦っている少年少女が救われ、青春を謳歌できることを信じて、次回放映を待っている。
最後に
エンディングテーマの発売はやくしてくださいもう待てません!
各話のエピローグ→EDの入りが最高にGET WILD。
書き出しだけ小説のようなもの
それが何であれ僕のしたことは許されるようなことではないのであろう。もしも神様が僕の行為を見ていて、その神様に僕を罰する力があったとするのならば、その場で僕を焼き殺していたのであろう。しかしながら、僕はまだこのとおり背筋を伸ばして街の雑踏の中を歩いていて、どうも罰を受けることはないらしい。ラッキィだ。あるいは神様にその力がなかったのか、もしくは神様など端から存在しなかったのではないか?ハハハ、愉快愉快。何も変わらない。今日と何も変わらない明日がやってきそうだ。
予感。直感。確信。返信。変身。答申。投身。落下。
綺麗な放物線だった。僕が見てきたどんな光景よりも素晴らしいものであったと断言しよう。彼がただ地球の引力に引かれていく様は、どうしようもない事実を僕に突きつけて輝いていた。自由を誰よりも求めた彼自身でさえもそう感じたに違いない。この世からは決して逃げられないのだという崇高な確信。それだけが彼を、僕を震え上がらせたのだ。それは神が提示した回答であり解答なのだ。やはり、神はいる。そう思う。僕はいま雑踏を歩いている。
「なあ、もう離していい?もう手がつかれたわ」
「カコさん、牛みたい」
「うしぃ?ウチの何が牛なん?きみ、ほんとに馬鹿にするのもいい加減にしてよ、もう」
「だって、ほら、『もう』って何回も言うからさ。」
「揚げ足取りめ」
彼は足を45度ほど上げて、おどけた表情をした。揚げ足取りのジェスチャのつもりだろう。体が固いので、足がほとんど上がっていない。揚げ足取りなのに足が上がらないとは皮肉が効いているな、と果子は思う。
「それで、もうこの手は離して良いのかしら?高瀬くん?」
「わっ、お上品!うそみたい!」
「もう離すよ!」
果子は手をはなした。彼女が手にしていたのはプラモデルの部品だった。台所で料理をしている高瀬にかわって模型制作の手伝いをしていたのである。先程まで彼女が持っていたのは模型飛行機の胴体と片翼で、それぞれを接着剤で固定するためであった。どうやらもうくっついているらしい。果子は模型を持ち上げてしげしげと眺めた。
「すぐくっつくものよのう」模型などほとんど作ったことがない果子は素直に感心した。
「あっ!ダメだよまだ離しちゃ!瞬間接着剤じゃないんだからさ!」高瀬はあわててコンロの火を止めて果子の元まで駆け寄ってくる。
「でもくっついてんで。果子さんの力やね。」
「セメダインは少し時間がかかるんだよう・・・もう、あ、でも大丈夫っぽいかな?いや、でも、まだ、どうしようかな、テープで留めておこうかな・・・。もう、面倒だな。プラモデルってやつは・・・。まったくもう・・・。」
そんなに文句を言うのならはじめから手伝わせなければいいのではないか?という素朴な疑問が彼女の頭をよぎったが、それを口にすることはなかった。彼女は、自分を慎み深い人間だと認識している。決定的な一言を言わない。それだけが人間関係を良好なものにすると信じているのであった。
「それにしてもさ」
「何?カコさん?」
「牛は君のほうやね。」
(続かない)