good by juvenile

それでも青春は続く

「ブックオフに本を売ったんだ」

「そういばこの前、ブックオフに本を売ったんだ。6冊で320円だった。少しは中身を見たり、痛み具合とか、そういうのを確認するのかなとと思っていたんだけど、全然そんなことはなくて、ただバーコードをピッってやって、『はい、6点で320円です。よろしいですか?』だって。システム化しているんだね。その時『へぇ』って思ったんだ」

「へぇ?」

「うん」

 私は彼の次の言葉を待ったけれど、この会話はそこで終わってしまったようだった。彼は大事な所をきちんと言葉にしてくれない。ただ匂わすだけだ。そういう傾向があった。以前は「それで?」とか「だから?」とか「どう思ったの?」と詳しく聞こうと質問をしていたが、その度に彼は少し困った顔をして「言葉にしたら美しくないから」と微笑むのだった。そういう物言いがとても腹立たしく思える日もあったが、今ではすっかり許容できるようになった。彼が考えていることが理解できるようになったのではなく、理解できなくても楽しめるようになった。どうしてそう思えるのか、言葉で説明しようとすると難しい。彼が「へぇ」と言えば、私も「へぇ」と言う。わからないけど、わかった気になる。この特殊な関係性が私達を強く結びつけている、そんな気にもさせるのだ。

「どうしたの?」

「なんだか可笑しくてさ」

「僕の話が?」

「うーん、君自身が、かな」

「よくわからないな」

「私にもよくわからないわ」

「面白いことを言うよね」

「お互い様よ」

二人は微笑んでいたと思う。こんな夜がずっと続きますように、と神様に祈りたい気分だった。